永久磁石を知る

自ら磁気を発し続ける物質を「磁石」と云います。人工的に製造される鉄系の磁石には、主原料の鉄(Fe)以外に、約1%の炭素(C)や他の元素を含有させています。この鉄の原子磁気が同じ方向のまま、炭素などの原子に挟まれて固定されるため、継続的に外部へ磁気が現れる、永久磁石となります。

永久磁石とは様々な磁石

減磁と消磁

磁石は経年により磁気が弱くなりますが、常温環境下の場合、数十年経過しても、極めて僅かにしか経年減磁致しません。その為、永久に減磁しないと考える方が一般的で、「永久磁石」とも呼ばれます。永久磁石の磁力は、温度環境に依存し、温度係数に依り増減します。温度が高くなれば磁力が弱くなり、温度が低くなれば磁力が強くなります。永久磁石を、高い温度で加熱し続けると、熱に耐えられなくなり、鉄の原子方向がバラバラに乱れることで減磁し続け、ある温度を超えると、完全に消磁します。この温度は、1895年にフランスの物理学者ピエール・キュリーによって発見されたことから、キュリー点、またはキュリー温度と呼ばれています。永久磁石に強い衝撃を加えた場合も、振動により原子の向きが乱れ、減磁します。

減磁と消磁物理学者ピエール・キュリー

磁力とは

永久磁石の能力を「磁力」と呼ぶことが多いですが、具体的には、磁石が反応する性質を「磁気」、磁気の強さを「磁力」、磁気が作用する場所を「磁場」または「磁界」といいます。これらは、磁石から発せられている、2つの磁極性質によるもので、N極とS極は引き合い、同極同士は反発し遠ざかろうとする、エネルギーによるものです。この磁気エネルギーは、通常の状態では視覚的に確認することができません。磁気は、N極から発し、S極へ入る性質があり、この磁極の流れを、視覚的に表した線を「磁力線」といいます。画像は、磁石と鉄粉を用いることで、磁気エネルギーを、視覚的に確認できるようにしたものです。

磁力線磁力線詳細

磁石の性能評価

磁石の能力を「強い・弱い」など、抽象的に云う事が多いですが、感覚的強弱だけでは主観的なため、磁石の性能を、第三者に対して正確に評価することができません。通常磁石の性能を検査する場合は、BHアナライザーに依って描かれるヒステリシスカーブに依って評価します。このヒステリシスカーブはBHカーブとも呼ばれ、得られる主な指標は、磁束密度(B)、保磁力(Hcb/Hcj)、最大エネルギー積(BH-max)などの国際規格単位で評価します。磁気単位については、磁気単位換算器をご参照ください。

⇒磁気単位換算器

磁石の性能評価

磁束密度(B)とは

磁力を線に例え、単位面積当たりから出ている束になった磁力線の本数を表します。残留磁束密度(Br)とは、永久磁石を外部磁場(H)に因ってM点まで磁化飽和し、その後、外部磁場(H)をゼロの状態に戻した際に、残留保持した磁束量(B)を云います。表面磁束密度とは、磁石の表面に対する磁束の密度を云います。SI単位(Wb/m2)ではテスラ(T)、CGS単位(Mx/cm2)ではガウス(G)を使います。

磁束密度(B)とは1

保磁力(Hcb/Hcj)とは

保磁力は抗磁力とも云います。磁化された磁性体を、逆方向(-)の磁場(H)によって磁化されていない状態に戻す為に必要な、外部磁場(H)の強さを云います。この数値が高いほど、負荷に対抗することができ、容易に減磁しにくくなります。SI単位ではアンペア毎メートル(A/m)、CGS単位ではエルステッド(Oe)を使います。

最大エネルギー積とは

磁場(H)と磁束(B)のエネルギー積で、(Bd)×(Hd)=の最大値を、最大エネルギー積(BH-maxと云います。磁石の単位体積当たりから得ることが可能な、最大磁束量の目安を表します。この数値が高く、P点と起点(0)が直線で45度に近い程、磁束密度(B)も保磁力(Hcb/Hcj)も兼ね備えた、バランスの良い優れた磁石と云えます。SI単位ではキロジュール立方メートル(kJ/m3)、CGS単位ではメガエルステッド(MOe)を使います。

吸着力とは

吸着力とは、吸引力とも云われ、磁石と鉄を含有する磁性体など、2つの物体の間に働く力と定義しています。吸着力を表す代表的単位は、N(newton)が用いらてれます。kgf(kilogram-force)やlbf(pound-force)など、質量の基本単位で表すこともできます。

吸着力とは

荷重とは

荷重とは、磁石と鉄板など、2点間の触れるところで発生する力と定義しています。その力は、摩擦や表面の状態や衝撃に依存して、負荷が変化します。磁石と鉄板など、平行に加わる負荷に耐え、滑らずに留まることができる滑り荷重も、N(newton)の単位で表すことができます。

荷重とは

吸着力と滑り荷重の計測方法

使用環境と計測方法よって、結果数値が異なります。そのため、磁石の特性仕様として吸着力を示す場合は、使用環境と計測方法を定義する必要があります。弊社では、以下の測定方法と環境条件で計測された場合と定義しています。

測定方法

1.吸着力

鉄板に対して、縦軸に垂直に引き、磁石が鉄板から離脱した際の力を、吸着力とする。

1.吸着力

2.滑り荷重

鉄板に対して、横軸に平行に引き、磁石が鉄板から移動した際の力を、滑り荷重とする。

2.滑り荷重

環境条件

  1. 1.鉄板の厚さ(T)は、磁石の厚さ(H)以上とする。
  2. 2.磁石は、鉄板の中心に設置とする。
  3. 3.鉄板面積は、磁石面積の3倍(300%)以上とする。
  4. 4.鉄板の材質は、純鉄(Fe)とする。
  5. 5.鉄板の表面は、凹凸なく平面で、摩擦係数がないものとする。
  6. 6.鉄板と磁石の間隙は、密着し間隙がないものとする。
1.鉄板の厚さ(T)は、磁石の厚さ(H)以上とする。3.鉄板面積は、磁石面積の3倍(300%)以上とする。5.鉄板の表面は、凹凸なく平面で、摩擦係数がないものとする。