「産業のビタミン」との異名を持つレアメタルは、樹脂や金属材料に添加することでさまざまな特性を持った製品を生み出す。自動車や電機といった日 本の基幹産業には欠かせない存在で、レアメタルが支える国内の最終製品の市場は150兆円とも言われている。資源に乏しいわが国では、その確保が喫緊の課 題となっており、リサイクルはそのための柱の一つ。リサイクル原料の回収から、粉砕、選別、抽出まで、産学官でシステム作りや技術開発が活発化しており、 今後の動向は産業界のみならず一般の消費者にも注目されている。
システム構築・技術開発進む−資源の安定供給へ
レアメタルは、埋蔵量が少ないか、特定の国や地域に遍在している。また、技術的・コスト的な問題で精錬が難しいことも多い。一般には経済産業省が
工業用需要を見込んでいる31鉱種を指す。レアアースもレアメタルの一種とされ、17元素で1鉱種として数えられている。31鉱種のなかでもニッケル、ク
ロム、マンガン、モリブデン、コバルト、タングステン、バナジウムは、経済安全保障の観点から1983年より国家備蓄が進められている。
2009年からは発光ダイオード(LED)材料として用いられるガリウムや、液晶テレビの透明電極に必須であるインジウムも備蓄対象に加わった。
レアメタルは、需要と供給のバランス以外に投機や産出国の思惑などさまざまな要因で価格が決定し、市況はこれまでにも乱高下を繰り返してきた。ただ、もともと供給量が限られているうえ、需要は増加傾向にあることから、長期的には価格の上昇が懸念されている。
特にレアアースについては7月、世界の生産量の9割以上を占める中国が、今年の輸出割当量(EL)を前年比4割減の約3万トンにすると発表。09年に1キ
ログラム当たり150ドル前後で取引されていたディスプロシウムは、今年に入って徐々に価格が上昇し、中国のEL発表後は370ドルまで急騰した。
使用済み製品からの回収量拡大が課題

京都市は京都サンガFCの公式戦の当日、
スタジアム前に小型家電の回収ボックスを
設置し事業の認知度向上を図っている
こうしたなか、国は海外資源確保、備蓄、代替材料開発とともに、リサイクルの推進を大きな柱の一つとして掲げている。ただ、現在のレアメタルリサ イクルは工程くずを対象にしたものがほとんどで、「都市鉱山」として各界から注目される使用済み製品からのリサイクルは、現時点ではあまり行われていな い。その最大の理由はレアメタルの抽出に膨大なコストがかかり、採算が取れないこと。都市鉱山の利用という課題の解決を図るには、リサイクル原料となる使 用済み製品の回収率の向上と、効率的なリサイクル技術の開発という二つのアプローチがある。
そうしたなか政府は、小型家電の回収システムの構築に力を注いでいる。これまでに家電量販店などと提携した携帯電話の回収事業や、地方自治体を通 じた小型家電の回収テストを実施。小型家電の回収モデル事業は08年度の秋田県、茨城県、福岡県に続いて、09年度は江東区・八王子市(東京都)、名古屋 市・津島市(愛知県)、京都市、熊本県水俣市でも始まっている。2年目を迎えた地域では認知度の向上とともに着実に回収量が増加しており、今後の動向に期 待が持てる。
一方、高効率なリサイクル技術の開発も活発化している。物質・材料研究機構はさきごろ、携帯電話などの電子機器から効率よく基板などを取り出す破 砕・粉砕装置の実用化にめどをつけた。筐体(きょうたい)を数秒でバラバラにし、基板からチップやメッキをはく離させることもできるという。従来、人の手 に頼っていた作業を機械化することで、解体工程の大幅な効率アップが見込めそうだ。
現在はそのまま廃棄されている液晶テレビなどの薄型パネルからインジウムを回収する技術の実用化も進んでいる。最近では、サンドブラストによって 短時間でパネルから透明電極を分離する技術や、ガラス基板をそのまま破砕し、高温高圧の水酸化ナトリウム溶液で処理することでインジウムを回収する技術が 開発されている。いずれも高効率で低コストなリサイクルの確立を目指した動きと言える。
そのほか、ハイブリッド車や電気自動車の普及に伴い、廃棄量の増加が予測される二次電池や永久磁石などのリサイクルへの取り組みも盛ん。近年この 分野では、非鉄各社や大手自動車メーカーによる事業参入が相次いでいる。ただ、これらは将来のリチウムやレアアースの価格高騰を見込んだ動きと見られ、現 段階では採算ラインに達していないのが実情のようだ。リサイクルを容易化する技術は徐々に前進しつつあるが、今後はさらなる開発のスピードアップが求めら れる。


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