自動車や携帯電話の部品に用いられるレアアース(希土類)資源大国である中国が、その輸出量を昨年比で40%減となる約2万トン削減することを 発表したことが注目されているが、レアアース輸出について中国政府が定めている「輸出量制限」と「輸出量分配制度」が中国国内のレアアース業界にも大きな 問題を生じさせており、輸出権の違法売買が行われ、その価格が高騰しているようだ。中国網が伝えた。

  中国商務部が7月に発表した『2010年第2期一般貿易レアアース輸出配分に関する通知』によると、国内、外資を合計した今年下半期のレアアー ス輸出配分合計は前年同期比約60%減の7976トンとされ、年間配分合計は前年の5万145トンから約40%減の3万258トンになるという。ここ数 年、年5万トン前後が保たれてきた中での2万トンの削減にレアアース輸出企業は「前代未聞」のショックを受けているようだ。

  ただ、中国政府が輸出配分を緊縮しようとする姿勢は2007年から見えていた、と記事は指摘。この年よりレアアース生産の国家計画が「指導性」 から「指令性」へと格上げされたのをきっかけに、それ以降輸出配分は年間15%を超えるペースで減少したという。さらに、09年には工信部が『レアアース 工業発展の特別計画(2009〜2015年)』を発表、そこで「15年までは輸出量を3万5000トンを上回らないようにする』ことを明確に要求している というのだ。

  輸出量の減少によって頭を抱えるのは、大半を中国からの輸入に頼っている日本のメーカーだけではなさそうだ。中国政府によるレアアースの「輸出 量分配制度」は1998年に始まり、各企業に対して輸出許可量を割り当てることになっている。当初は低付加価値のレアアース製品輸出を制限することで関連 産業振興の役割を果たしてきたが、近年は禁止されている割当量の売買が企業間で行われるようになったのだ。輸出量緊縮によりその売買金額は高騰、輸出して も利益が出ない状況から、外国企業との契約を取りやめる企業も出ているという。

  そんな中、多くの企業が軒並み割当の削減を強いられてきた中で、ジスプロシウムなどの希少価値がとりわけ高いレアアースを取り扱っているある企 業の割当が増加するという事態が発生した。これについて「稀少」金属の輸出を厳しくコントロールするはずなのに本末転倒ではないかという不満の声が挙がっ ている。このことも10年以上変化なく続いている制度が限界に近づいていることの表れ、と記事は紹介した。

  国外からは輸出削減自体への反発を受け、国内からは「産業バランスが崩れる」と制度上の不備を指摘されたレアアース政策。中国政府は今後どのような措置を講じるだろうか。

 「産業のビタミン」との異名を持つレアメタルは、樹脂や金属材料に添加することでさまざまな特性を持った製品を生み出す。自動車や電機といった日 本の基幹産業には欠かせない存在で、レアメタルが支える国内の最終製品の市場は150兆円とも言われている。資源に乏しいわが国では、その確保が喫緊の課 題となっており、リサイクルはそのための柱の一つ。リサイクル原料の回収から、粉砕、選別、抽出まで、産学官でシステム作りや技術開発が活発化しており、 今後の動向は産業界のみならず一般の消費者にも注目されている。

システム構築・技術開発進む−資源の安定供給へ

 レアメタルは、埋蔵量が少ないか、特定の国や地域に遍在している。また、技術的・コスト的な問題で精錬が難しいことも多い。一般には経済産業省が 工業用需要を見込んでいる31鉱種を指す。レアアースもレアメタルの一種とされ、17元素で1鉱種として数えられている。31鉱種のなかでもニッケル、ク ロム、マンガン、モリブデン、コバルト、タングステン、バナジウムは、経済安全保障の観点から1983年より国家備蓄が進められている。
2009年からは発光ダイオード(LED)材料として用いられるガリウムや、液晶テレビの透明電極に必須であるインジウムも備蓄対象に加わった。
レアメタルは、需要と供給のバランス以外に投機や産出国の思惑などさまざまな要因で価格が決定し、市況はこれまでにも乱高下を繰り返してきた。ただ、もともと供給量が限られているうえ、需要は増加傾向にあることから、長期的には価格の上昇が懸念されている。
特にレアアースについては7月、世界の生産量の9割以上を占める中国が、今年の輸出割当量(EL)を前年比4割減の約3万トンにすると発表。09年に1キ ログラム当たり150ドル前後で取引されていたディスプロシウムは、今年に入って徐々に価格が上昇し、中国のEL発表後は370ドルまで急騰した。

使用済み製品からの回収量拡大が課題

京都市は京都サンガFCの公式戦の当日、スタジアム前に小型家電の回収ボックスを設置し事業の認知度向上を図っている

京都市は京都サンガFCの公式戦の当日、
スタジアム前に小型家電の回収ボックスを
設置し事業の認知度向上を図っている

 こうしたなか、国は海外資源確保、備蓄、代替材料開発とともに、リサイクルの推進を大きな柱の一つとして掲げている。ただ、現在のレアメタルリサ イクルは工程くずを対象にしたものがほとんどで、「都市鉱山」として各界から注目される使用済み製品からのリサイクルは、現時点ではあまり行われていな い。その最大の理由はレアメタルの抽出に膨大なコストがかかり、採算が取れないこと。都市鉱山の利用という課題の解決を図るには、リサイクル原料となる使 用済み製品の回収率の向上と、効率的なリサイクル技術の開発という二つのアプローチがある。

 そうしたなか政府は、小型家電の回収システムの構築に力を注いでいる。これまでに家電量販店などと提携した携帯電話の回収事業や、地方自治体を通 じた小型家電の回収テストを実施。小型家電の回収モデル事業は08年度の秋田県、茨城県、福岡県に続いて、09年度は江東区・八王子市(東京都)、名古屋 市・津島市(愛知県)、京都市、熊本県水俣市でも始まっている。2年目を迎えた地域では認知度の向上とともに着実に回収量が増加しており、今後の動向に期 待が持てる。

 一方、高効率なリサイクル技術の開発も活発化している。物質・材料研究機構はさきごろ、携帯電話などの電子機器から効率よく基板などを取り出す破 砕・粉砕装置の実用化にめどをつけた。筐体(きょうたい)を数秒でバラバラにし、基板からチップやメッキをはく離させることもできるという。従来、人の手 に頼っていた作業を機械化することで、解体工程の大幅な効率アップが見込めそうだ。

 現在はそのまま廃棄されている液晶テレビなどの薄型パネルからインジウムを回収する技術の実用化も進んでいる。最近では、サンドブラストによって 短時間でパネルから透明電極を分離する技術や、ガラス基板をそのまま破砕し、高温高圧の水酸化ナトリウム溶液で処理することでインジウムを回収する技術が 開発されている。いずれも高効率で低コストなリサイクルの確立を目指した動きと言える。

 そのほか、ハイブリッド車や電気自動車の普及に伴い、廃棄量の増加が予測される二次電池や永久磁石などのリサイクルへの取り組みも盛ん。近年この 分野では、非鉄各社や大手自動車メーカーによる事業参入が相次いでいる。ただ、これらは将来のリチウムやレアアースの価格高騰を見込んだ動きと見られ、現 段階では採算ラインに達していないのが実情のようだ。リサイクルを容易化する技術は徐々に前進しつつあるが、今後はさらなる開発のスピードアップが求めら れる。

 高性能磁石にとって不可欠なジスプロシウムやネオジムの価格高騰を受けて、磁石の材料となるネオジム合金メーカーが対策に動いている。
 リサイクルの強化や鉱山開発をにらんだ海外展開、顧客への価格転嫁などだ。価格高騰の原因は、ネオジム鉱石を含む希土類の主産地である中国が、7月に希 土類の2010年輸出枠を前年比で4割削減すると決めたこと。ネオジムの産地が中国に偏る状況はそう簡単に変えられず、メーカー側には腰を据えた対応が求 められている。
 ネオジム合金メーカーの昭和電工と中央電気工業は、ともにベトナムでネオジム磁石のリサイクルを始める。昭和電工は今年5月にハノイ近郊で新工場を稼働。ネオジム合金と、やはり希土類の一種で磁石の性能を高めるのに不可欠な金属ジスプロシウムを年間800トン生産する。
 大阪大学の木村剛教授、中村浩之助教らは「Z型六方晶フェライト」というフェライト磁石に似た酸化物セラミックスが、室温下で数百ガウスの弱い磁場をか けることで電気磁気効果が現れることを発見した。省電力の不揮発性メモリー素子などの電子デバイスの開発につながる成果で、英科学誌ネイチャー・マテリア ルズ電子版に9日発表した。
 電気磁気効果は外部から磁場をかけて電荷の偏りを引き起こす現象。Z型六方晶フェライトはストロンチウムやコバルト、鉄、酸素からなる。今回の実験で は、27度Cで0ガウスから2500ガウスまでの間で磁場を周期的に変化させ、電荷の偏りを任意に制御することに成功。省電力の不揮発性メモリー素子など の電子デバイスに応用できることを確かめた。

 名古屋工業大学は、補助巻線を使って出力密度を高めた駆動用モータを開発した。補助巻線に流す直流電流の向きを変 えることで、永久磁石の磁束を強めたり、弱めたりできる。モータの回転数が低いときは"強め界磁"で出力を高める。一方、回転数が高くなると、"弱め界 磁"で逆起電力や鉄損を低らし、効率を高める。

 名古屋工業大学は、EV(電気自動車)やHEV(ハイブリッド車)向けに、出力密度を高めた駆動用モータを開発した(図)。
 出力密度を高めるために、従来のように希土類磁石を多く使うのではなく、ステータ側に補助巻線を追加することで希土類磁石の磁束を補う構造としたのが特 徴だ。トヨタ自動車が2005年に発売した「レクサスRX400h」の駆動用モータの磁石量の半分に抑えつつ、同等の出力密度を持たせた。
 駆動用モータの出力やトルクは、希土類磁石の量に比例する。通常は、出力を高めるために、磁石の量を増やすことが多い。しかし、磁石を高温下で減磁しな いようにするための添加剤Dy(ディスプロシウム)など、希土類の多くは中国からの輸入に頼っているため、安定して供給されないリスクがあるほか、価格が 上がる可能性がある。

以下、『日経Automotive Technology』2010年9月号に掲載
図 開発した駆動用モータの構造
従来の駆動用モータと同様、ロータの外周側にステータを配置する。今回新しいのは、ロータ面を左右から挟みこむように、補助巻線を配置している点である。

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